顔面神経麻痺とは、顔面の表情筋(表情を作る筋肉)を支配する顔面神経が麻痺し、顔面の動きが悪くなる病気のことです。
通常は片側だけが麻痺し、両側が麻痺することはまれです。
人間の複雑な表情は約20種類ある表情筋によって作られ、各筋肉が個別に動くように指令を送っているのが顔面神経です。
顔面神経は脳から出て側頭骨内という耳の後ろの骨の中を通り、耳の下から出てきて外に出ると、耳下腺の中で眼、鼻、口唇に向かう3つの枝に分かれて、それぞれの筋肉に分布します。
この顔面神経経路のどこかが障害されると表情筋の動きが悪くなり、まぶたが閉じない、食べ物が口からこぼれ落ちるなどの症状が現れます。
前兆として、顔面神経の通り道である耳の後ろや耳の下に痛みを感じることがあります。また、目が乾燥する、うまく閉じれない、飲み物や食べ物を口からこぼしてしまう、といった症状がでる場合があります。
そのような違和感を感じた場合はすぐに耳鼻咽喉科で受診する必要があります。
顔面神経麻痺は中枢性と末梢性(ベル麻痺・ハント症候群)に分類されます。
中枢性の顔面神経麻痺は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、生まれつきの病気であるメビウス症候群などによって起こります。
頻度としては1%以下で、ほとんどが末梢性によるものとされています。
*メビウス症候群
メビウス症候群は 先天性 の病気で,病状は進行しません。脳神経は12本あり、6番目の外転神経(眼球を外に動かす神経)と7番目の顔面神経(顔の筋肉を動かす神経)に生まれつき麻痺を認めるときメビウス症候群と言います。
①ベル麻痺
循環障害による神経の腫れ。または単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペスなど口の感染症の原因ウイルス)による感染症と考えられています。
ヘルペスウイルスによって顔面の筋肉を支配する顔面神経が炎症を起こし、麻痺すると考えられています。
その他のウイルス、例えば、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルスのほか、流行性耳下腺炎、風疹、単核球症、またはインフルエンザの原因ウイルスなども、ベル麻痺の原因になることがあります。
感染症にかかると神経が腫れ、神経が通る頭蓋骨の細い通路の壁に押しつけられて圧迫を受けます。
②ハント症候群
水痘帯状疱疹ウィルス(水ぼうそうのウイルス)が原因です。
水痘帯状疱疹ウィルスは小児期に初感染した後、顔面神経の膝神経節に潜伏感染します。
潜伏感染した水痘帯状疱疹ウィルスが免疫力低下により再活性化するとハント症候群が発症します。
顔面神経自体に障害を来すものを末梢性顔面神経麻痺といいますが、ハント症候群は末梢性顔面神経麻痺の約15%を占めます。
*ベル麻痺とハント症候群の違い
ベル麻痺は、片側の顔面神経麻痺だけで、それ以外の症状などがみられないものをいいます。
これに対して、ハント症候群とは、麻痺をおこしている側の耳に帯状疱疹ができたり難聴がおこったり、また、めまいを伴ったりするものをいいます。
ベル麻痺と区別がつきやすいものですが、ベル麻痺かハント症候群か区別のつかないこともあります。
ハント症候群は、ウイルスの抗体検査で確定診断ができます。
③外傷性
交通事故や他の事故により頭蓋骨、顔面部を強打、骨折した際に起こる疾患です。
④その他
脳腫瘍、先天性、手術の後遺症、中枢性(脳神経)からの麻痺などがあります。
中枢性顔面神経麻痺は、大脳皮質から皮質延髄路、皮質網様体路など、顔面神経核に至るまでに原因がある場合に起こる顔面神経麻痺の総称です。
脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などを起因として発症します。
通常、顔面の下半分にある顔の筋肉は、反対側の大脳に支配されています。そのため顔の片側の下半分に麻痺が起こりますが比較的軽い傾向です。
急に発症し,麻痺のピークが2日以内であることがほとんどです。
発症1~2日前に,耳介部から乳様突起部にかけての痛みやしびれを感じることもあります。
・顔の筋肉に麻痺が起こります。
・顔面片側のおでこのしわ寄せ不能。
・目を閉じるのが不能(目の渇き)。
・患側の鼻唇溝(ほうれい線)は消失し,口の端は下垂します。
・口を動かす筋肉も影響するため食べ物、飲み物をこぼす。
・聴覚過敏が生じたり味覚の異常が現れたりする場合もあります。
中枢性(脳の疾患)の顔面神経麻痺は額にしわ寄せ(左右両方)ができますが末梢性顔面神経麻痺はしわ寄せができなくなります。
耳の後ろの疼痛,患側舌の味覚障害,涙の分泌障害,聴覚過敏などを併発することがあり,こうした症状により顔面神経経路の障害部位を推察します。
耳の周辺の発赤と水ぶくれ、のどの痛み(風邪の様な症状)、耳鳴りなどで、ベル麻痺と区別がつきやすいものですが、ベル麻痺かハント症候群か区別のつかないこともあります。
なお、ベル麻痺もハント症候群も他人にうつることはありません。
病院で顔面神経麻痺と診断されると治療は副腎皮質ステロイドや抗ウイルス剤、星状神経節ブロックなどを行います。
❶ステロイド
炎症、浮腫を抑える効果があり重症化しないようにする働きがありますが、発症後に治療が遅れてしまうと神経の損傷が進んでしまいます。その場合、その神経を回復させる効果はステロイドにはありませんのでとにかく早めに受診(異変を感じたら最低3日以内に)、服用することが重要です。
❷抗ウイルス剤
ウイルスがそれ以上に増えないようにするためのものであり、ウイルス自体を殺す作用はありません。そのためできるだけ発症後早めにに服用していただくことが大変重要です。
それで改善しなければ血流改善剤や神経賦活剤などの薬が処方されます。
軽症のマヒの場合は2週間から4週間程度で回復します。
薬での治療に効果が見られず重症度が高い場合は手術となる場合もあります。
西洋医学での初期治療が大変重要です。
時間が経てば経つほど治りにくく後遺症が残りやすくなりますのでとにかく早めに治療を開始したいです。
発症後はなるべく早め(3日以内)に医療機関を受診し、ステロイドや抗ウイルス剤、ビタミン剤などで回復を促し、同時にハリ治療を週に1回から2回行いますと非常に効果的です。
この疾患での一本鍼治療は首、肩、背中の緊張をとることは勿論のこと、お顔にもハリ(置鍼)をしつつお灸での治療も行っていきます。
そうすることで可能な限り体の疲れが取り除かれ、質の良い睡眠を得られることで体全体の機能が回復、また血流も良くなることで薬の効果が最大限発揮されるのではないかと考えております。
また、鍼治療と共にスーパーライザーEXを行うとより効果的です。
スーパーライザーEX照射(2点照射)をすることで顔面神経の機能回復を目指します。
*2点照射・・・茎乳突孔(顔面神経の出口)と星状神経節に5分ずつ照射。
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